Googleの検索結果に「AI概要」が表示されるようになって、ウェブサイトへのクリック率(CTR)はどのように変化しているのでしょうか?今回は、AI概要が従来のSEO対策とクリック率に与える影響と、これからのウェブ運営において必要な対策について考えてみましょう。
AI概要(AI Overview)とは?Googleの新しい検索機能を理解しよう
AI概要(AI Overview)は、2023年から実験的に導入され、2024年8月に日本でも正式に展開が始まったGoogle検索の新機能です。これまでの検索結果では「青いリンク」の一覧が表示されていましたが、AI概要では検索結果の最上部に、AIが複数のウェブサイトから情報を集めて要約した回答が表示されます。
以前は「SGE(Search Generative Experience)」と呼ばれていましたが、現在は「AI Overview」という名称に変更されています。
AI概要の特徴
①簡潔な情報要約
複数のウェブサイトから情報を収集し、検索クエリに対する包括的な回答をAIが自然な文章で生成します。
②情報源の表示
情報の出典となったウェブサイトへのリンクが含まれており、ユーザーは詳細を確認できます。
なぜAI概要が注目されているのか?
AI概要は単なる検索結果の表示変更ではなく、Google検索の根本的な使用体験を変える可能性を持つ機能です。特にウェブサイト運営者やSEO担当者が注目する理由は、次の3つのポイントにあります。
- 検索結果の最上部にAI生成の回答が表示されるため、従来のオーガニック結果が下へ押しやられる
- ユーザーがAI概要の回答だけで満足し、ウェブサイトをクリックしなくなる可能性がある
- SEOの従来の成功指標だった「検索順位の上昇」が必ずしもクリック数増加に結びつかなくなる
これらの変化は、「SEOは終わった」とまで言われるほど大きなインパクトをもたらしています。しかし実際のところ、どの程度の影響があるのでしょうか?
AI概要導入後、クリック率はどう変化したか?データから読み解く現状
複数の調査結果から、AI概要の導入後、検索結果のクリック率には明らかな変化が見られています。特に上位表示されているサイトほど、その影響は大きいようです。
上位表示サイトのCTR低下データ
いくつかの調査機関が発表しているデータを見てみましょう。
調査機関 | CTR低下率 | 調査対象 |
---|---|---|
Ahrefs | 34.5%減少 | 情報キーワードでの上位表示ページ |
Amsive | 平均15.49%減少 | AI概要が表示されるページ |
Similarweb | 約20%減少 | AI概要使用時の検索結果全体 |
吉田哲也氏(個人サイト集計) | 1位で6.3ポイント減少、2位で2.5ポイント減少 | 自サイトのSearch Console集計データ |
これらのデータから、AI概要が表示される検索結果では、検索結果1位でも最大34.5%ものクリック率低下が確認されています。特に検索上位に表示されていたサイトほど、クリック率の下落幅が大きいという傾向があります。
検索順位によるCTR変化の違い
吉田哲也氏のブログで公開されているデータによると、AI概要導入前後での順位別クリック率の変化は次のようになっています。
検索順位 | 導入前CTR | 導入後CTR | 変化幅 |
---|---|---|---|
1位 | 24.9% | 18.6% | -6.3ポイント |
2位 | 15.2% | 12.7% | -2.5ポイント |
3位 | 11.7% | 9.4% | -2.3ポイント |
この結果から明らかなように、最も目立つ1位表示の検索結果がAI概要の影響を最も強く受けていることがわかります。これは、AI概要が検索結果の最上部に表示されることで、1位表示のサイトの視認性が特に低下するためと考えられます。
なぜ1位のダメージが大きいのか?
①視覚的優位性の喪失
従来1位が確保していた「検索結果最上段」というポジションにAI概要が割り込むことで、視覚的な優位性が薄れています。
②スクロールの問題
もともと下位表示は「スクロールが必要」だったため、さらに少し下がった程度では行動変化が小さい一方、1位は「スクロールなしで見える」という大きなメリットを失っています。
影響を受けやすいクエリタイプとウェブサイト
AI概要の影響はすべての検索クエリやウェブサイトで均一に現れるわけではありません。特に影響を受けやすいのは、情報探索型のクエリと呼ばれるタイプの検索です。
AI概要が表示されやすい検索クエリの特徴
下記のようなクエリタイプでは、AI概要が表示される確率が高く、クリック率への影響も大きくなります。
クエリタイプ | 具体例 | 影響度 |
---|---|---|
定義・説明型 | 「〇〇とは」「〇〇の意味」 | 非常に高い |
方法・手順型 | 「〇〇のやり方」「〇〇の作り方」 | 高い |
リスト・比較型 | 「おすすめの〇〇」「〇〇 比較」 | 高い |
事実確認型 | 「〇〇の営業時間」「〇〇の住所」 | 中程度 |
商品検索型 | 「〇〇 購入」「〇〇 通販」 | 低い〜中程度 |
ブランド直接検索 | 「Amazon」「Facebook」 | 低い |
特に「〇〇とは」などの定義系クエリや、「〇〇のやり方」といった手順説明系のクエリで検索結果が表示されているサイトは、AI概要によるクリック率低下の影響を強く受けています。PLAN-Bのブログによれば、インフォメーショナル系のクエリにおいては、上位表示ができてもクリックされる割合は「非常に低い」と報告されています。
YMYL(Your Money or Your Life)領域への影響
健康、金融、法律などの重要な生活情報を扱うYMYL領域のウェブサイトも、AI概要の影響を受ける可能性があります。GoogleはE-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を重視しており、AI概要においても信頼できる情報源が優先的に参照されます。
この分野では、正確性と信頼性が特に重要なため、非公式な情報や個人的な意見よりも、公的機関や専門機関の情報がAI概要に取り上げられる可能性が高くなっています。
AI概要時代のSEO対策はどう変わる?
AI概要の台頭によって、これまでのSEO対策のアプローチは見直しが必要になっています。しかし、「SEOは終わった」という極端な見方は正確ではありません。では、AI概要時代にどのようなSEO対策が有効なのでしょうか?
トラフィック減少に対する基本的な考え方
まず理解すべきなのは、AI概要によってゼロクリック検索(何もクリックせずに検索を終える行動)が増加する傾向にあるということです。そのため、以下のような基本的な考え方が重要になります。
- 単純な情報提供だけでは、ユーザーがサイトを訪問する動機が弱くなる
- AI概要でカバーできない専門的・独自的な価値を提供することが重要
- AI概要に参照されるリンクとしての「0位表示」を目指す
- 情報探索型以外のクエリ(取引型、ナビゲーション型)にも注力する
「AI概要でSEOは終わり?」に対する現実的な見解
①SEOの基盤は引き続き重要
オーガニック検索からの流入は依然として主要なトラフィック源です。AI概要に参照されるためにも、検索順位を上げる基本的なSEO施策は必要です。
②ロングテールやブランド指名検索には影響が少ない
より具体的なロングテールキーワードや、あなたのブランドを直接検索するユーザーへの影響は限定的です。
③より深い情報を求める段階でクリックは発生する
AI概要は概要のみを提供するため、詳細を知りたいユーザーはサイトをクリックします。
AI概要時代に効果的な具体的施策
では具体的に、AI概要時代にどのようなSEO対策が有効でしょうか?
- E-E-A-Tの強化 – 経験、専門性、権威性、信頼性を高めることが、AI概要に参照される可能性を高めます。著者情報の明示、専門家による監修、データに基づく内容などが重要です。
- 構造化と感情のハイブリッド戦略 – AIに拾われやすい明確な構造(見出し、FAQ、箇条書き)と、AI生成では得られない感情的要素(体験談、独自の視点)を組み合わせることが効果的です。
- AI概要に参照されるための最適化 – 以下の点に注意しましょう:
- 明確な定義や回答を冒頭に配置する
- 構造化データ(Schema.org)を適切に実装する
- 質問形式の見出しに直接回答する
- 高い権威性を持つ情報源を引用する
- AI概要でカバーできない価値の提供 – 独自調査データ、インタビュー、詳細な事例分析、体験に基づく考察など、AIでは簡単に要約できない価値を提供しましょう。
The Bridgeのブログでは、「AIが要約できないコンテンツ」として、「人の感情を動かすコンテンツ」が重要だと指摘しています。例えば、実際の失敗と試行錯誤を交えたリアルな体験談や、担当者の価値観が反映されたストーリーなどは、AIでは再現が難しい要素です。
今すぐ実践できるAI概要対応のためのチェックリスト
AI概要時代のSEO対策として、今すぐ実践できるアクションをチェックリストとしてまとめました。
サイト全体で対応すべき事項
- Search Consoleでの変化を定点観測する – AI概要導入前後でのクリック率、表示回数、順位の変化を分析しましょう。
- 影響を受けやすいページを特定する – 特に情報探索型のクエリでアクセスを集めていたページを特定し、優先的に対策しましょう。
- E-E-A-T向上のための施策を行う – 著者情報の充実、専門家による監修の追加、情報源の明示などを進めましょう。
- 構造化データの実装を見直す – FAQページ、HowTo、Articleなどの適切なスキーマを実装しましょう。
個別ページで対応すべき事項
チェック項目 | 対応方法 |
---|---|
明確な回答の提示 | 記事冒頭で主要な質問に対する明確な回答を提供する |
見出し構造の最適化 | 検索意図に合致する質問形式の見出しを使い、直後に回答を記載する |
独自の価値提供 | AI概要では得られない独自データ、事例、体験談などを追加する |
視覚的コンテンツの充実 | オリジナルの図解、インフォグラフィック、動画などを追加する |
更新頻度と鮮度の確保 | 定期的な内容更新と公開日・更新日の明示を行う |
従来のベストプラクティスを愚直に続けることも大切です。内部リンク最適化、ユーザー体験の向上、コンテンツの質の向上などの基本的なSEO施策は、AI概要時代においても重要な基盤となります。
まとめ:AI概要時代にSEOは終わらない、変化するだけ
AI概要の導入によって、SEOの世界は大きな転換点を迎えています。複数の調査によれば、AI概要が表示される検索結果では、最大34.5%ものクリック率低下が報告されており、特に検索上位表示サイトへの影響が大きいことがわかっています。
しかし、「SEOは終わった」という極端な見方は正確ではありません。AI概要時代においても、SEOの基本原則である「ユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供する」ことの重要性は変わりません。むしろ、AI概要に参照される情報源として選ばれるためには、より質の高いコンテンツが求められるのです。
今後のSEO対策では、次の3つのポイントが特に重要になるでしょう:
- AI概要に参照される情報源を目指す – E-E-A-Tの強化、構造化データの適切な実装など
- AIでは代替できない価値の提供 – 独自データ、事例分析、実体験に基づく考察など
- 定点観測とデータに基づく継続的な改善 – クリック率やトラフィックの変化を分析し、効果的な対策を見極める
AI概要の導入によって、検索結果上位表示の価値が相対的に低下する一方で、「0位表示」とも呼べるAI概要内での参照という新たな競争軸が生まれています。この変化をチャンスと捉え、より質の高いコンテンツ制作とSEO対策に取り組むことが、今後のウェブ戦略の鍵となるでしょう。
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引用元:
PLAN-Bのブログ:AI概要によるクリック率の低下、最新の調査で明らかに
PowerWeb: AI検索時代にSEOの価値はどう変わる?自然検索流入の行方
The Bridge: AIオーバービュー時代のSEO戦略。クリックされない時代に選ばれるコンテンツとは
吉田哲也氏ブログ: 検索順位ごとのCTR変化から考えるAI時代のSEO
Xpert Digital: Google AIの概要:スプレッドの増加は、クリック率の大幅な低下に繋がる
Unite.AI: GoogleのAI概要とオープンウェブの運命
VAR-C: AI Overviewとは?SEOへの影響を解説!Google検索はどう変わる?