リスティング広告を 他社名に出すのはOK? 競合広告や比較広告について

リスティング広告では、他社名をキーワードとして設定することで自社のサービスや商品を効果的に宣伝できる可能性がありますが、法的なリスクも伴います。

本記事では、他社名をキーワードとして利用する際の商標権侵害のリスクや、除外依頼への対応方法などについて、初心者にもわかりやすく解説します。

リスティング広告で他社名をキーワードにする基本的な考え方

インターネット広告の代表的な手法である「リスティング広告」では、ユーザーが検索したキーワードに応じて広告が表示されます。自社の商品やサービスだけでなく、競合他社名をキーワードとして設定することも技術的には可能です。では、このような広告配信は法的に問題ないのでしょうか?

ポイント

リスティング広告において「キーワード」として他社名を設定することと、「広告文」に他社名を記載することは全く別の問題です。キーワード設定は基本的に許容されていますが、広告文での使用には大きなリスクがあります。

キーワード設定と広告文での使用の違い

まず、リスティング広告における「キーワード」と「広告文」の違いを明確にしておきましょう。

項目 説明 他社名使用の可否
キーワード ユーザーがどのような検索語で検索したときに広告を表示するかを決める設定項目 基本的に可能(各媒体のポリシーで制限なし)
広告文 実際にユーザーに表示される広告のタイトルや説明文 原則として不可(商標権侵害のリスクが高い)

例えば、「A社」という競合他社があった場合、「A社」というキーワードで検索したユーザーに対して自社の広告を表示させることは、Google広告やYahoo!広告のポリシー上では制限されていません。しかし、広告文に「A社より優れたサービス」などと記載することは商標権侵害になる可能性が高いのです。

他社名のキーワードでリスティング広告を出稿する法的リスク

他社名をリスティング広告のキーワードとして使用する際には、いくつかの法的リスクが考えられます。主なものを見ていきましょう。

商標権侵害のリスク

最も注意すべき法的リスクは「商標権侵害」です。他社が商標登録している名称を無断で使用すると、商標法違反に問われる可能性があります。

  • キーワード設定:基本的に商標権侵害にはならない(Google、Yahoo!のポリシーでも制限されていない)
  • 広告文での使用:商標権侵害になる可能性が高い(最大10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)

判断の分かれ目は、ユーザーに混同を生じさせるかどうかという点です。広告文に他社名を使用すると、その広告が他社の提供するものだと誤解されるリスクが高まります。

不正競争防止法違反のリスク

他社名を使った広告が、不正競争防止法で禁じられている「混同惹起行為」や「誤認惹起行為」に該当する可能性もあります。

例えば、「A社の代わりに当社をご利用ください」といった広告文は、A社と何らかの関係があるかのような誤解を与え、不正競争防止法違反となる可能性があります。

肖像権侵害のリスクはあるのか?

肖像権は人の容姿・姿態を撮影・公表されない権利ですが、リスティング広告における他社名のキーワード設定自体は、直接的に肖像権侵害には該当しません。

ただし、広告文や広告内の画像で他社の代表者や従業員の写真を無断使用した場合には、肖像権侵害に該当する可能性があります。肖像権侵害の事例では、慰謝料として30万円〜80万円程度の賠償金が認められたケースもあります。

ポイント

リスティング広告における肖像権侵害は、キーワード設定ではなく広告内のビジュアル要素(画像や動画)での無断使用が問題となります。他社の代表者や従業員の写真・動画は絶対に使用しないようにしましょう。

他社名キーワードの利用可否を判断する3つの基準

他社名をキーワードとして利用する際は、以下の基準で判断することをおすすめします。

  1. 商標登録の有無を確認する
    特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で、対象となる他社名が商標登録されているか確認しましょう。
  2. 広告文への記載を避ける
    キーワード設定は可能でも、広告文に他社名を記載することは避けるべきです。
  3. 業界慣習を調査する
    同業界内で他社名キーワードの使用がどの程度一般的かを調査しましょう。

他社名で出稿された場合の対応策と除外依頼

逆に、自社名で検索した際に競合他社の広告が表示される場合、どのような対応が可能なのでしょうか?

除外依頼の方法と例文

まずは、競合他社に直接連絡して除外依頼をする方法があります。以下に除外依頼のメール例文を紹介します。

件名:リスティング広告キーワード除外のお願い

〇〇株式会社 ご担当者様

お世話になっております。××株式会社の△△と申します。

弊社の社名「××」をキーワードとしたリスティング広告が貴社から配信されていることを確認いたしました。

つきましては、相互の企業イメージ保護のため、弊社名「××」および関連キーワードを貴社のリスティング広告から除外していただきますようお願い申し上げます。

弊社といたしましても、貴社名「〇〇」を弊社リスティング広告のキーワードから除外する対応を取らせていただきます。

ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

××株式会社
△△

この除外依頼に法的な強制力はありませんが、互いに紳士的な対応として受け入れられることも多いです。特に同規模の企業間では「囚人のジレンマ」的状況を避けるため、相互除外に応じるケースが見られます。

媒体社への申し立て

商標権を保有している場合、Google広告やYahoo!広告などの媒体社に対して商標権侵害の申し立てを行うことも可能です。

ただし、この申し立ては広告文での商標使用を制限するもので、キーワードでの使用制限にはならない点に注意が必要です。

法的手段の検討

広告文に自社の商標を無断で使用されている場合は、弁護士を通じて対応を検討することも選択肢の一つです。具体的には以下のような手段があります。

  • 内容証明郵便による警告
  • 仮処分申立
  • 損害賠償請求訴訟

ただし、キーワード設定自体は違法ではないため、法的手段は広告文での商標使用に対してのみ有効です。

リスティング広告の他社名キーワード使用の事例

他社名キーワードの使用に関する具体的な事例を見てみましょう。

事例 結果 ポイント
A社が競合B社名をキーワードにし、広告文にもB社名を記載 B社からの警告を受け、広告文を修正 広告文への他社名記載は商標権侵害のリスクが高い
C社がD社名をキーワードにしたが、広告文には記載せず 法的問題なく広告配信を継続 キーワード設定のみであれば基本的に問題なし
E社とF社が相互に除外依頼を実施 両社とも相手社名のキーワードを除外 紳士的な対応として相互除外が効果的

他社名キーワードを使う際の5つの注意点

最後に、他社名をキーワードとして使用する際の注意点をまとめます。

  1. 広告文での他社名使用は避ける
    キーワードとしての設定は可能でも、広告文への記載は避けましょう。
  2. 比較広告は慎重に
    「〇〇社より優れた△△」などの表現は、景品表示法違反になる可能性があります。
  3. 除外依頼には誠実に対応する
    他社からの除外依頼に対しては、相互除外を前提に誠実に対応しましょう。
  4. 定期的な競合調査を行う
    自社名で検索した際に表示される広告を定期的にチェックしましょう。
  5. 広告効果とリスクのバランスを考慮する
    他社名キーワードの使用によるメリットとデメリットを総合的に判断しましょう。

まとめ:リスティング広告の他社名キーワードは適切な範囲で活用を

リスティング広告における他社名キーワードの使用は、以下のポイントを押さえておきましょう。

ポイント

  • キーワード設定としての他社名使用は基本的に可能
  • 広告文への他社名記載は商標権侵害のリスクが高い
  • 除外依頼は法的強制力はないが、紳士的な対応として検討する価値あり
  • 肖像権侵害は広告内の画像・動画で他者を無断使用した場合に問題となる
  • 常に法令遵守と倫理的な広告運用を心がける

リスティング広告は効果的なマーケティング手法ですが、他社名の使用には法的・倫理的な配慮が必要です。本記事で解説した内容を参考に、適切な広告運用を行いましょう。

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